固溶化熱処理

組織の改善

固溶化熱処理

固溶化熱処理は、冷間加工や溶接などによって生じた内部応力の除去、劣化した耐食性の向上に効果があります。

代表的鋼種

この熱処理に適用される代表鋼種は18-8ステンレス(18Cr-8Ni)ともいわれるSUS304があります。

粒界腐食とは?

結晶粒界にできた析出物の影響で腐食が進むことを粒界腐食といいます。これを固溶化処理で改善させます。

C(炭素)は、高温では全てオーステナイトに固溶していますが、600℃付近では0.02%程度しか固溶できず、この付近の温度帯をゆっくり冷却されると、C(炭素)は炭化物として析出してきます。固溶限度を超えたC(炭素)は、結晶粒界で周囲のCrと反応し、Cr炭化物として安定します。

この為、粒界付近はCr含有量が不足して不動態の形成が不十分になり、 粒界のみが腐食されやすくなります。これを粒界腐食といいます。

加熱方法

1,050℃以上の高温に加熱して一定時間保持し、全体が一様なオーステナイトになった時点で急冷します。処理温度が高いほど炭化物はよく固溶しますが、結晶粒度が粗大化したり表面に酸化スケールが生じます。

冷却方法

冷却時間は速いほどよく、遅いと固溶した炭素が再び炭化物として析出します。しかし速すぎても熱歪みで変形する事もあるので、処理部品の形状、肉厚、寸法などを十分考慮の上、水冷、油冷または空冷、強制空冷かを選びます。一般には薄い品物または小物は空冷し、肉厚物は水冷します。

先程も述べたように、600℃付近ではC(炭素)とCrは結合してクロム炭化物を作りやすく、粒界腐食の原因となって耐食性が著しく低下します。これを防止する為に600℃付近の温度区域を可能なかぎり早く冷却(通過)させる必要があります。粒界腐食試験を行うために、わざわざこの温度範囲に加熱することを鋭敏化熱処理と言います。